誰もそこにはいなくて、ただ意識だけが漂っているようだった。
僕らは、遠くに山をのぞむ、だだっ広い草原にいた。風が背の高い草をさやさやと鳴らし駈けていく。小さく、人間の頭が見えた。意識を凝らすと、カメラがズームインするみたいにその場所を大写しにした。男が立ってる。変な、茶色の布切れだけを身にまとって、裸足だ。その足元に、もうひとり誰かがいる。そっちのほうは、なぜかうつぶせになって、裸で倒れてる。
「ねねね、カインとアベル兄弟のこと知ってる?楽園を追放されたアダムとイブの息子たち。聖書に倣えば私たちの祖先ってことみたい。カインが兄で、…